imaginegargle’s blog

中国文明の揺籃である河南省への旅の準備とその旅路について記すブログ

河南省を往く47

 新安県までの車内。1号車の5番という最前部の席を確保したと思ったら機関車がいない。一番後ろの車両、席であった。窓際の俺の席は若いカップルに占拠され動じる気配が無いので、苦笑しつつ席側の空いた席に座らせていただく。いよいよ函谷関を拔けて中原の広野に降り立つ。

 勾配を下りつつあるとは言っても、列車は高鉄と比べてのんびりとかつ確実に、牛のように歩む。こういうのんびりとした旅もまたいい。昼過ぎて巨大な桶のようなカップラーメンを待った乗客達がやって来て目の前の電気給湯器でお湯を入れ始める。蓋に指で穴を開け、そこからお湯を注ぐ派と蓋をベリッと剥がしてお湯注ぎ添付のフォークを蓋と桶の縁にぶっ刺して蓋を止める派とに分かれる模様。

 車掌さんは忙しい。停車駅が近づくと駅名を大声で叫びつつ車内を歩き回る。「三門峡到了〜!」

 その間ゴミを集めトイレを掃除し自分もトイレに入る。トイレから出て来ると熱湯が出る給湯器の蛇口を開きちょいちょいと指先を洗って水気を客車のシートカバーで拭う。一連の流れるような無駄のない動きに感動する。

 時々ワゴンがやってきては止まり最後尾なのでUターンして戻っていく。一度目はラーメンとかお菓子とかを売りに来て、二度目はフルーツや道口焼鶏を売っていた。多分食堂車からだと思うが、金盥にいっぱい詰まったなんだか辛そうなタレに漬かった焼いた鶏の脚がおばさんの手で運ばれてきた。買う人がいたからよほど美味いのだろう。

 営業していない鉄門の駅を通り過ぎ、千唐誌斉の裏を通り抜けるとすぐに新安県が近づき俺は下車の準備に入った。


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