imaginegargle’s blog

中国文明の揺籃である河南省への旅の準備とその旅路について記すブログ

河南省を往く9

 「河南省を往く」とは言い条、なかなか出発しないのがじれったいところだが、河南省と言えばデリケートな話題になるが他省人からの酷い差別についても触れねばなるまい。

 20年も前になるが、とにかく北京あたりでタクシーに乗っていると前を走る車が河南ナンバーだと露骨に「河南人!」などと言って舌打ちをする運転手がいた。

 留学生に理由を聞くと「あなたはなぜそんなことを知ってるのですか?」と不思議がられたが、「なぜ特定の省人を差別するのか」の方が何倍も不思議である。

 彼女は少し考えて、「あの省は貧しいので悪いことをする人がたくさんいるのです。例えば食品や薬品などの偽物を作って売るなどしているのです。」と答えてくれた。農業が産業の大半を占める河南省なので貧しいことはそうなんだろうが、全部の人が悪いわけではない。

 最近「P2Pネット金融において河南人が本当に差別されたか?」という論文を読んでなんとなくその理由がわかってきた。論文の結論はお金を貸す相手として河南省出身かどうかは無関係である。(すなわち、ネット金融では河南省差別は存在しない。)が、貧しい地域ゆえに返済のリスクとしての参考にはされているがそれは資本主義的には間違った態度とは言えないということらしい。

 同論文で冒頭で明かされた差別の理由は「①沿岸部に比べて工業化が遅れた貧しい省だからその象徴になった。」「②中華文明の揺籃という輝かしい歴史はあるが、同時に近代化の遅れた地域でもある。つまり、アヘン戦争以降の遅れた中国というイメージに重なる河南省への差別は、近代における中国人自身のコンプレックスの表れである。」「③河南方言の顕著さと出稼ぎ労働者の多さが河南省人にラベルを貼ることが容易化しネットの普及で一気に差別の対象と化した。」ということである。

 このように見てくると河南省人差別は日本の部落差別に比べて歴史が浅く、いわば改革開放の歪みとネットの普及によって生み出されたものと言えるだろう。小生のような一人の河南省愛好家にしてみれば極めて残念な、心の痛む事態である。