河南省を往く60
拙ブログも60回を数える。飽きっぽい性格だがよくぞ続いたと我ながら呆れる次第だ。
今日は河南省開封市理事庁街を訪れた際に、理事庁街小学付近でお店を開いていたyoutuber「菊城探味」氏に紹介して頂いた民間芸術博物館を開いている張俊濤氏(汴京灯笼张)について書いてみたい。
中国の伝統的行事として春節から15日めの節日である元宵節(上元節)には灯籠に火を灯してその日を祝う風習がある。「上元釣灯」というやつだ。今回の訪中時にも街角にはその名残の赤いランタンが撤去されずに残っていた。元宵というのは正月初日の出を元旦と呼ぶのに対して、正月初めての満月を祝う風習なのであろう。伝統的中国社会に於いてはそれぞれの家庭で思い思いに灯籠を造り、火を灯して月の出を待ったものと思われる。
今回紹介して頂いた灯籠張氏は開封市でこの灯籠作りを代々営んできた7代目の伝承者である。彼から頂いた名刺によれば「灯籠張第7代伝人」・「灯籠張彩灯展覧館館長」・「開封市彩灯芸術研究会秘書長」の肩書が並ぶ。
彼の博物館に入館するとサマザマな意匠の灯籠が出迎えてくれるが、ひときわ目についたのが巨大な観音像であった。「あ、これ相国寺の。」とつぶやいたら張館長はニコニコ笑いながらさらにスイッチを入れると内部に仕込まれた灯りがついた。内側から照らされる日本のネブタのような人形なのである。さらに相国寺の観音様は千手千眼仏であるから全ての手のひらに眼をお持ちでおわす。その眼の一つ一つにランプが仕込まれ一斉に輝き出すのだ。これには本当に驚いた。
更に彼は様々な木彫の建具(例えば窓の枠に作られた飾り)を収集してこの博物館に展示している。その数は無慮1万点以上を数えるという。それも建て替えられるために破壊されようとしている家屋から保護してきた物と思われる。
かように灯籠張氏は自らの使命として中国の伝統文化を保護し、展示し、これを後世に伝えることに精力を傾けている。そのために小中学生を対象にワークショップを開催したり大学に講義に行ったりと教育活動にも献身しているというわけだ。
日本では「無形文化遺産」などと呼ぶが中国では「非物質文化遺産」と称する。この灯籠もその非物質文化遺産である。中国の街頭を歩くといろいろな料理屋の店先にこの非物質文化遺産の看板が掛かっているが、その優劣を言うものではないが美食を楽しんだ後にはこういう美しいものを蒐めた小さな場所を訪問するのも悪くないと感じた次第だ。
灯籠張氏から彼が制作したカタログ数冊を頂いたので、内容をちょっとだけ紹介する。「今度は友達を連れて来てくれ。」と言われたのでぜひ再訪したい。
灯籠張博物館の住所
千手千眼観音と張氏
ランタンの図案型紙
収集された古家具の一部
こういう技術が凄いと感じる
帰国後すぐに青森市内で核燃料再処理工場建設反対の集会があったので参加してきた。宿泊したホテルのロビーに展示してあったネブタの顔をおまけに上げておく。