imaginegargle’s blog

中国文明の揺籃である河南省への旅の準備とその旅路について記すブログ

河南省を往く16

 出発まであと9日だ。不安でしょうがない。

 雑談を書く。近年中国を歩くと、面と向かって罵られたりはしないが、特に地方で「鬼子」と囁かれたりした経験は無いだろうか。俺はある。昔は「日本人」だったが2019年には「鬼子」の囁きが聞こえた。河南省鉄門鎮の千唐誌斎から洛陽に戻るタクシーが無くて、博物館のお姉さんに滴々で車を呼んでもらったが、運転してたおっさんが家族と携帯で話をしてる中で「今、鬼子を洛陽に運ぶ」って言ってるのを聞いてそこそこ凹んだ。中国語わからない日本人だからちょっと油断して言っちゃったんだろうけど、またプロの運転手じゃないから仕方ないんだけど・・・。

 また、タクシーの運転手さんで気のいい人になるといろいろ街路を説明してくれるんだが、俺みたいなのでもまあわかる部分はわかるんで思わず「そうか~!」と日本語で相づちを打つ。すると彼は「そうか~、とバカは同じか?」と聞いてくる。「いや、バカはそうか~とは違うよ。そうか~は『是吗』くらいの意味だよ。」というとわかってくれた。「バカ」っていうのは日本人の罵り言葉として夙に有名であるが、「そうか~」はなんで知ってるんだろう?

 ある日、俺の大好きな「抗日神劇」を見ていたら、悪辣な日本軍将校(鬼子である)が相変わらず盛大に部下を「バカ~!」などと罵っている。本当に見ている方も憎らしくなるというか気分が悪くなる演技なんだけど、役者さん上手です。たいていそういう日本人将校は「板垣」とかそういう名前。そうする間にへろい日本軍兵士がやって来て板垣さんに報告する。「向こうに敵がいます!」板垣さんはそこで、憎々しげに薄笑いを浮かべ「そうか~、よ~し」ときれいな日本語で台詞をしゃべるや「大砲で撃て~」などと無残な命令をするのだ。

 ここではたと気づいた。「そうか~」はこうして広まり「バカ~!」に迫る知名度を上げたのではないか。こんどは河南省の食堂などでメニューを見ながら「そうか~、よ~し!」とニヤリと笑って注文をしてみようかと考えている。

 抗日劇ってちゃんと日本人の俳優さんを雇って作った「百団大戦」とか立派なフィルムもあるんだけど、そういうんじゃなくって日本軍の女将校が出てきて超残忍とか、共産党の女政治委員が日本軍の戦車乗っ取って一人で敵を全滅させるとか、忍者部隊がいるとか、そういう荒唐無稽なのが好きです。

それと、俺はもう「老鬼子」でいいやって諦めている。